売却方法
両手取引・囲い込みとは?媒介契約とレインズで売主がチェックするべき注意点
不動産の売却を調べていると「両手取引」「囲い込み」という言葉を目にすることがあります。どちらも仲介会社の報酬の取り方と関わる用語で、売主が不利になりやすいといわれる論点として知られています。
この記事では、両手取引と片手取引の違い、囲い込みが起きる仕組み、媒介契約3種類とレインズ(指定流通機構)の役割、そして2025年に強化された規制の中身を解説します。あわせて、投資用ワンルームの売却では、一般的な住宅よりも利益相反が起こりにくい仕組みもお伝えします。
仲介を挟まず買取業者に直接査定を依頼する →1. 両手取引と片手取引の違い
不動産の売買では、仲介会社が売主と買主の間に入って取引を成立させます。このとき仲介会社が、売主と買主のどちらか一方か、もしくは両方から報酬を受け取るかで呼び方が変わります。
- 片手取引:売主側と買主側に別々の仲介会社がつき、それぞれが自分の依頼者からのみ仲介手数料を受け取る形
- 両手取引:1社の仲介会社が売主と買主の双方から媒介を受け、両方から仲介手数料を受け取る形
たとえば2,000万円の物件の売買では、仲介手数料の上限は「売却額の3% + 6万円 + 消費税」で約72万円です。片手なら売主か買主のどちらか一方から約72万円。両手なら売主と買主の両方から約72万円ずつ、合計で約144万円が1社の報酬になります。
※400万円超の物件の速算式です。2024年7月の報酬告示改正で、800万円以下の低額な物件は売主・買主それぞれから上限33万円(税込)まで受領できる特例があります。投資用ワンルームは800万円を超えることが多いため、本記事は本則で説明します。両手取引そのものは合法
両手取引は法律で認められており、不動産業界では広く行われている取引形態です。違法ではなく、珍しいものでもありません。
ただし、1社が売主と買主の双方の利益を同時に扱うことになるため、利益相反になりやすい構造だという指摘は以前からあります。売主は高く売りたい、買主は安く買いたい。その相反する立場の両方から報酬を受け取る点が、論点として知られています。
仲介手数料の話そのものは別記事で詳しく扱っています。「○○万円込み」の意味とは?買取業者が支払う仲介手数料の真実もあわせてご覧ください。本記事は、両手を成立させようとして起きる「囲い込み」と、それに関わる制度のほうに焦点を当てます。
2. 「囲い込み」が起きる理由
両手取引を語るうえで切り離せないのが「囲い込み」です。
囲い込みとは
囲い込みとは、媒介を受けた仲介会社が、他社からの「この物件を買いたい客がいるので紹介してほしい」という問い合わせを断り、自社で買主を見つけて両手取引にしようとする行為を指します。
具体的には、他社から問い合わせが来たときに「すでに購入の申し込みが入っています」などと事実と異なる回答をして、他社の買主候補を遠ざけるやり方が代表例です。自社だけで買主を確保できれば、売主側と買主側の両方から手数料を取れるためです。
売主にとっての一般的なデメリット
一般の住宅(実需マンションや戸建て)では、囲い込みは売主の不利につながりやすいとされています。
- 他社の買主候補が排除されるため、買い手の間で価格を競う動きが働きにくい
- 自社で買主が見つかるまで時間がかかり、成約までが長引きやすい
- 結果として、高く・早く売れる機会を逃しやすい
買い手の競争が価格を押し上げる住宅市場では、その競争を狭めてしまう囲い込みは、売主の利益と反する方向に働きやすいわけです。
複数の買取業者から査定を取る →3. 投資用ワンルームでは利益相反になりにくい
ここで注意したいのが、投資用ワンルームの場合、上の一般的なデメリットがそのままの形では当てはまりにくいという点です。
買主がほぼ業者なので、競争の構図が異なる
一般の住宅では、買主は自分で住む個人(エンドユーザー)です。だからこそ買い手同士の競争が成立し、囲い込みでその競争を狭めると価格が伸びにくくなります。
ところが投資用ワンルームでは、仲介に出しても買取に出しても、買主はワンルームの転売を専業とする業者になることがほとんどです。個人投資家が一般市場でワンルームを買うことは、実態としてあまり多くありません。この点は仲介と買取の違いとは?投資用ワンルームでは「直接買取」が合理的な理由で詳しく解説しています。
買主が業者に収れんするため、ワンルームの査定額は最終的に業者の仕入れ価格の水準に落ち着きやすくなります。つまり、「囲い込みで一般客の競争が消えて価格が下がる」という住宅市場の機序は、ワンルームには当てはまりにくいのです。
ワンルームで売主の取り分が削られる主因は別にある
ワンルームの売却で売主の手取りが目減りする要因は、囲い込みそのものより、次の2点に現れやすいといえます。
- 仲介を挟むことで仲介手数料が乗ること(同じ業者に売るのに、手数料の分だけ手取りが減る)
- 仲介と業者の間で査定額が「○○万円込み」のような形でやり取りされ、売主に届く金額が見えにくくなること
このため、ワンルームでは「囲い込みされると安く買い叩かれる」と単純化するより、「仲介を挟むこと自体で手取りが削られやすい」と理解したほうが実態に近くなります。手数料がどう抜かれるかの詳しい仕組みは「○○万円込み」の記事を参照してください。
4. 媒介契約3種類と囲い込みの起きやすさ
囲い込みの起きやすさは、売主が結ぶ「媒介契約」の種類とも関わります。媒介契約には3つの種類があります。
| 種類 | 複数社への依頼 | 自分で買主を見つけた場合 | レインズ登録義務 | 業務報告の頻度 |
|---|---|---|---|---|
| 一般媒介 | 複数社に依頼できる | 自分で取引できる | 任意(義務なし) | 取り決めによる |
| 専任媒介 | 1社のみ | 自分で取引できる | あり(7営業日以内) | 2週間に1回以上 |
| 専属専任媒介 | 1社のみ | 自分で取引できない | あり(5営業日以内) | 1週間に1回以上 |
専任媒介・専属専任媒介は、1社にだけ売却を任せる契約です。窓口が1社に絞られるぶん販売活動の責任が明確になる一方、その1社にとっては「自社で買主を見つければ両手にできる」というインセンティブも働きやすくなります。このため、専任系の契約は、一般媒介に比べて囲い込みが起きやすいといわれます。
一般媒介は複数社に同時に依頼できるため、1社が物件を抱え込んで他社の買主を遠ざけても、別の会社が買主を見つけてくる余地があります。囲い込みが起きにくい契約形態といえますが、各社の販売活動への熱量が分散しやすいという面もあります。
どの契約が向いているかは物件や売却方針によりますが、両手・囲い込みのリスクという観点では、契約の種類によって起きやすさに差があることを知っておくと判断材料になります。
5. レインズと2025年の規制強化
囲い込みを見えにくくしている背景には「レインズ」という仕組みがあり、ここに2025年から規制が入りました。
レインズとは
レインズ(指定流通機構)は、不動産会社が物件情報を登録・共有する全国的なネットワークです。不動産会社専用の物件掲載ポータルサイトと思ってください。専任媒介・専属専任媒介を結んだ仲介会社は、一定期間内にレインズへ物件を登録する義務があります。
- 専任媒介:契約締結日の翌日から起算して7営業日以内に登録
- 専属専任媒介:契約締結日の翌日から起算して5営業日以内に登録
- 一般媒介:登録は任意(義務なし)
レインズに登録されると、他社の仲介会社もその物件の存在を知り、自社の買主候補を紹介できるようになります。逆にいえば、レインズに登録しなかったり、登録しても他社からの問い合わせを断ったりすれば、囲い込みが成立してしまう余地がありました。
2025年1月施行の規則改正
この点について、国土交通省が宅地建物取引業法の施行規則を改正し、2025年1月1日から施行されました。改正のポイントは次のとおりです。
- レインズへの取引状況(ステータス)の登録・更新が義務化された
- ステータスは「公開中」「書面による購入申込みあり」「売主都合で一時紹介停止中」の3つから選んで登録する
- 登録証明書の交付時に、ステータスの確認方法を売主に説明する義務が加わった
- 2025年1月4日以降に発行される登録証明書にはQRコードが付き、売主自身がレインズ上のステータスを確認できるようになった
この改正により、レインズへの虚偽の登録や、他社への不当な情報遮断は、宅建業法65条にもとづく指示処分などの対象になり得る行為として位置づけが明確になりました。
ここで注意したいのは、囲い込みそのものを直接罰する刑事罰があるわけではない、という点です。「違法(犯罪)」と断じるのは正確ではなく、「規制が強化され、行政処分の対象になり得る行為」と理解するのが実態に合っています。
「囲い込みは無くなった」とまではいえない
規制が始まったことで、売主が自分でステータスを確認できるようになるなど、対策は前進しました。ただし、この規制はまだ運用が始まったばかりで、実効性には課題があるとの指摘もあります。「規制ができたから囲い込みは無くなった」とまではいえず、「対策が進み始めた段階」という温度感で捉えておくのが無難です。
仲介を挟まず複数の買取業者から査定を取る →6. 両手取引・囲い込みのリスクを抑える方法
売主の立場でできる現実的な対処を整理します。
レインズの登録証明書とステータスを確認する
専任・専属専任で媒介契約を結んだら、レインズの登録証明書を受け取り、ステータスが「公開中」になっているかを確認します。2025年1月以降の証明書にはQRコードが付いているため、売主自身でも状況を確認できます。長く「売主都合で一時紹介停止中」になっているなど、不自然な点があれば説明を求める材料になります。
業務報告を受け取り、販売状況をたずねる
専任媒介なら2週間に1回以上、専属専任媒介なら1週間に1回以上、仲介会社には業務処理状況を報告する義務があります。報告のなかで「他社から問い合わせはあったか」「どのような販売活動をしたか」をたずねておくと、囲い込みの兆候に気づきやすくなります。
一般媒介で複数社に依頼する選択肢を知っておく
囲い込みのリスクを抑えたい場合、一般媒介で複数社に依頼するという選択肢もあります。1社が抱え込んでも他社が買主を見つけられる余地が残るためです。ただし各社の熱量が分散しやすい面もあるため、物件や方針との相性で判断することになります。
投資用ワンルームなら、そもそも仲介を挟まない選択もある
ここまでの対処は、買主が個人の住宅売却を念頭に置いたものです。投資用ワンルームの場合は、前述のとおり仲介に出しても買主は業者になることがほとんどで、仲介を挟むぶん手数料が乗ります。
そのため、ワンルームでは「囲い込み対策をして仲介で売る」より、買取業者に直接持ち込んで仲介手数料そのものをなくすほうが、手取りの面で合理的になるケースが多くなります。複数の買取業者から査定を取って比較すれば、業者間で金額を競わせることもできます。
7. よくある質問
- Q.両手取引は違法ではないのですか?
- A.違法ではありません。1社が売主と買主の双方から媒介を受けて手数料を受け取る両手取引は、法律で認められており、業界で広く行われています。ただし、売りたい側と買いたい側の双方から報酬を受け取る点が利益相反になりやすい、という論点がよく知られています。
- Q.囲い込みは違法ですか?
- A.囲い込みそのものを直接罰する刑事罰はありません。ただし2025年1月施行の規則改正で、レインズへの虚偽登録や他社への不当な情報遮断は、宅建業法にもとづく指示処分などの対象になり得る行為として位置づけが明確になりました。「違法(犯罪)」というより「行政処分の対象になり得る行為」と理解するのが正確です。
- Q.専任媒介と一般媒介、囲い込みのリスクが低いのはどちらですか?
- A.囲い込みのリスクという点では、複数社に依頼できる一般媒介のほうが起きにくいとされます。1社が物件を抱え込んでも、他社が買主を見つける余地が残るためです。専任・専属専任は1社に絞るぶん両手のインセンティブが働きやすい一方、販売活動の責任が明確になるという利点もあります。物件や方針との相性で判断するのがよいでしょう。
- Q.レインズに登録されているか自分で確認できますか?
- A.専任・専属専任で媒介契約を結ぶと、レインズの登録証明書が交付されます。2025年1月4日以降に発行される証明書にはQRコードが付いており、売主自身がレインズ上の取引状況(ステータス)を確認できます。ステータスが長く「一時紹介停止中」になっているなど不自然な点があれば、説明を求める材料になります。
- Q.投資用ワンルームでも両手取引や囲い込みは問題になりますか?
- A.論点としては関係しますが、実態は違います。ワンルームは仲介に出しても買主が業者になることがほとんどで、「囲い込みで競争が消えて安くなる」という住宅市場の機序がそのままは当てはまりません。ワンルームで手取りが削られる主因は、仲介を挟むことで手数料が乗る点にあります。仲介を挟まず買取業者に直接依頼する方法も検討する価値があります。
8. まとめ
両手取引と囲い込み、そして関連する制度を整理しました。
- 両手取引は1社が売主・買主双方から手数料を取る形で、合法だが利益相反になりやすい
- 囲い込みは両手にするために他社の買主候補を遠ざける行為
- 一般の住宅では、囲い込みは買い手の競争を狭め、売主の不利につながりやすい
- 媒介契約は3種類あり、1社に絞る専任系のほうが両手のインセンティブが働きやすい
- レインズは物件情報を共有する仕組みで、専任7営業日・専属専任5営業日以内の登録義務がある
- 2025年1月施行の規則改正でステータス登録が義務化され、虚偽登録などは行政処分の対象になり得る形に
- ただし規制は始まったばかりで、囲い込みが無くなったとまではいえない
- 投資用ワンルームでは買主がほぼ業者のため、利益相反の現れ方が住宅とは違い、手取りが削られる主因は仲介手数料にある
仲介で売る場合はレインズのステータスや業務報告を確認しておくと安心です。投資用ワンルームの場合は、そもそも仲介を挟まず買取業者に直接査定を依頼するほうが、手取りの面で合理的になるケースが多いといえます。
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