売却方法
「○○万円込み」の意味とは?買取業者が支払う仲介手数料の真実
仲介会社とワンルーム買取業者間のやり取りに「○○万円込み」という業界用語が出てくることがあります。「2,000 万円込みです」のような言い方です。
この「込み」は何を指しているのか。そして売主にとってどういう意味を持つのか。一般的な不動産売却ガイドではあまり解説されていない、業界用語と仕組みを解説します。
この記事の結論を先にお伝えすると、「○○万円込み」は仲介経由でワンルームを売却する時に本来の査定額が見えにくくなる業界の仕組みです。
仲介を挟まず買取業者に直接査定を依頼する →1. まず「両手取引」とは何か
「○○万円込み」を理解するために、その前提となる「両手取引」という業界用語を解説しておきます。
両手取引と片手取引の違い
不動産の売買では、仲介会社が売主と買主の間に入って取引を成立させます。仲介会社の報酬は、売主と買主の一方か、両方から受け取るかで大きく変わります。
- 片手取引:仲介会社が売主または買主の片方からのみ仲介手数料を受け取る
- 両手取引:仲介会社が売主と買主の両方から仲介手数料を受け取る
たとえば 2,000 万円のワンルームの売買では、仲介手数料の上限は「売却額の 3% + 6 万円 +消費税」で約 72 万円です。片手なら売主か買主のどちらかから 72 万円。両手なら売主と買主の両方から 72 万円ずつ、合計 144 万円が仲介会社の報酬になります。
両手取引は合法で、業界では一般的
両手取引は法律上認められており、不動産業界では広く行われている取引形態です。違法でも珍しくもありません。
両手取引には、仲介会社にとって売主側からも買主側からも報酬を取れるという強いインセンティブがあります。単純に報酬が 2 倍になるので当然といえば当然です。
2. 「○○万円込み」とは何か
「○○万円込み」は、業者間(仲介会社と買取業者の間)で使われる業界スラングです。
使われ方
仲介会社が買取業者に「この物件、いくらで買い取れますか?」と査定依頼を出すと、買取業者は「2,000 万円込みです」のように回答します。
この「込み」は「買主側の仲介手数料込み」の意味です。つまり、買取業者が「2,000 万円」と言っている金額には、買取業者が仲介会社に支払う買主側の仲介手数料が含まれているということです。
買取業者は「私(買主)が支払う買主側手数料込みで 2,000 万円が上限です。仲介さんはそこから自分の取り分(買主側手数料)を抜いて、残りを売主に伝えてください」というニュアンスで提示しているわけです。
売主に届く金額と最終手取りの流れ
買取業者が「2,000 万円込み」で査定したケースでは、売主の最終的な手取りは以下のようになります。
- 買取業者の提示額:2,000 万円(買主側の仲介手数料込み)
- 仲介会社が買主側の仲介手数料を計算(規定の 3% + 6 万円 +税が上限、ここでは約 70 万円)
- 仲介会社が売主に提示する査定額:2,000 万円 − 買主側手数料約 70 万円 = 約 1,930 万円
- 売主は約 1,930 万円で売却(売主が認識する売却額)
- 売主は別途、売主側の仲介手数料を仲介会社に支払う(規定の 3% + 6 万円 +税が上限、ここでは約 70 万円)
- 売主の最終手取り:約 1,930 万円 − 売主側手数料約 70 万円 ≒ 約 1,860 万円
仲介会社の総報酬は、買主側(業者の「込み」から差し引いた分)と売主側(売主が直接支払う分)の合計で約 140 万円の両手取引になります。
「込み」を挟まない買取直接で査定を取る →3. 「◯◯万円込み」に潜む問題
この仕組みには、売主にとってわかりにくい点が 2 つあります。
問題 1:買取業者の本来の提示額が売主に伝わらない
売主に伝わるのは「査定額 1,930 万円です」という最終的な金額だけです。買取業者の本来の提示額が 2,000 万円だった、という事実は売主には知らされません。
売主の立場では「仲介会社が出してきた査定額が業界の相場」と認識するしかないため、自分の物件の本来の査定額がわかりにくくなります。
問題 2:規定の上限を超えて抜くことが「できる素地」がある
仲介手数料の上限は法律で「売却額の 3% + 6 万円 +消費税」と定められています。両手取引ではこの上限が売主側・買主側それぞれに適用されます。
「○○万円込み」の仕組みでは、仲介会社が買取業者の提示額からいくら抜くかは仲介会社の裁量に委ねられます。理屈の上では、規定の上限を超えて差し引くことができてしまう素地があります。
ただし、これは「大っぴらに行われている慣行」というわけではありません。次のような理由で、実際にはあまり起きません。
- 買取業者側にも違和感を持たれる(売主の手取りが想定より低くなるため)
- 売主の手取りが減りすぎて、手出し売却の場合は手出し額が増えて売却不成立になりかねない
- 売却不成立になれば仲介会社にとっても報酬がゼロになる
- 業界内の評判にも影響する
実際に上限を超えて抜くケースは多くはありませんが、リスクとして知っておく価値はあります。
補足:良心的な仲介エージェントの場合
「○○万円込み」のやり取りでは、仲介の裁量で「売主側と買主側からいくらずつ取るか」を調整できる余地があります。
たとえば売主の手出し額が大きすぎて売却が成立しなさそうな場合、買主側の仲介手数料を規定上限より少なめにとる仲介エージェントが存在します。買主側の手数料を少なめにとれば、結果として売主に伝わる査定額も上がります。売主の手出し額を抑えられる、という流れです。
ただしこれは仲介会社の売上を減らす行為になるため、エージェント個人の判断で許される範囲は限られているのが現実です。仲介会社の経営方針として「両手で規定上限まできっちり取る」が標準になっているところが多く、こうした柔軟な対応をしてくれる仲介エージェントは少数派です。
大手仲介会社の両手取引比率の高さは、こうした良心的な調整が業界で広く行われていないことの一つの証拠になっています。
4. 直接買取に持ち込めば「込み」前の額が手元に届く
ここまでの仕組みを踏まえると、ワンルーム売主にとって合理的な選択は「仲介を挟まずに買取業者へ直接持ち込む」ことになります。
直接買取の場合:
- 「○○万円込み」の「込み」部分(仲介手数料)が発生しない
- 買取業者の本来の提示額が、そのまま売主に伝わる
- 売主の手取り = 買取業者の提示額(諸費用は別途)
仲介経由と直接買取で、売主の手取りには次のような違いが出ます。
| 経路 | 業者の支出(提示額) | 売主が認識する売却額 | 売主が払う仲介手数料 | 売主の手取り |
|---|---|---|---|---|
| 仲介経由(両手「○○万円込み」) | 2,000 万円(込み) | 約 1,930 万円 | 約 70 万円(売主側) | 約 1,860 万円 |
| 買取直接 | 2,000 万円 | 2,000 万円 | 0 円 | 2,000 万円 |
同じ物件で業者の支出が同じでも、仲介経由で「○○万円込み」のスキームが入ると、買主側手数料分(約 70 万円)が売主への査定額から削られ、さらに売主自身が売主側手数料(約 70 万円)を仲介会社に払うことになります。結果として売主の手取りは約 140 万円の差が出ます。これが直接買取の経済合理性の核です。
仲介を挟まず複数の買取業者から査定を取る →5. 具体的な対処法
それでは売主は具体的にどのように動けばよいのでしょうか。
仲介中心ではなく買取限定の一括査定サイトを使う
一般的な不動産一括査定サイトの多くは仲介会社中心の設計になっており、登録された仲介会社が買取業者に査定額を確認し、売主に金額を提示する形になります。
買取業者限定の一括査定では、参加業者が直接売主に査定額を提示する仕組みなので、「込み」を挟まない金額が手元に届きます。
このサイト(oneroom-kaitori)は買取限定の一括査定で、投資用ワンルームに特化しています。
買主が発行する「買付証明書」を取得する
「買付証明書」とは、買主が「この物件の購入を申し込みます」と表明する書類で、希望する購入価格が書面に記載されます。売買契約書と違って法的な拘束力はなく、発行は任意ですが、買付証明書が手元にあると、買主の査定額や購入申し込みの信ぴょう性が上がります。
仲介で売却する場合でも、仲介会社の担当者に「買付証明書を見せてください」と依頼すれば、買主側に発行を依頼してくれます。
ただし、買付証明書の価格がすでに仲介手数料を差し引いた後の金額で記載されているケースもあります。これは仲介会社と買取業者の担当者間で事前に金額を調整したうえで発行されているパターンです。
仲介手数料を差し引く前の本来の査定額を知りたい場合は、「仲介手数料を差し引く前の金額を教えてくれますか」と仲介担当者に伝えると、対応してくれることがあります。
直接買取と仲介経由の見積もりを比べる
仲介経由で査定が出てきた時に、買取限定の一括査定でも同条件で査定を取って比較すると、「込み」の影響がどれくらいかが具体的な金額で見えてきます。
6. よくある質問
- Q.「○○万円込み」は売主に対して使われる言葉ですか?
- A.いいえ、業者間(仲介会社と買取業者の間)で使われる業界スラングです。売主が直接耳にすることはあまりなく、仲介会社の社内資料や業者間のやり取りで出てくる言葉です。売主に提示される時は「査定額は ◯◯ 万円です」のような形になり、「込み」前の金額や内訳は表に出ません。
- Q.両手取引は違法ではないのですか?
- A.違法ではありません。仲介手数料の規定上限の範囲内であれば、両手取引は合法かつ業界で広く行われています。ただし、仲介会社が売主と買主の両方から報酬を受け取る仕組みは、利益相反になりやすい論点として知られており、業界内でも議論されているテーマです。
- Q.規定の上限を超えて仲介手数料が抜かれることは実際にありますか?
- A.「○○万円込み」のやり取りでは、理屈の上ではそういうことができてしまう素地はあります。ただし大っぴらに行われている慣行ではなく、買取業者側に違和感を持たれる、売主の手取りが減りすぎて売却が不成立になる、といった理由で実際にはあまり起きません。念のため知っておきたいリスク、というレベルの論点です。
- Q.仲介に出さなければ「○○万円込み」の影響は受けませんか?
- A.はい。買取業者に直接査定を依頼すれば、「○○万円込み」を挟む仲介会社が間に入らないため、業者の提示額がそのまま売主に届きます。投資用ワンルームの場合は仲介に出しても最終的な買主が業者になることが多いため、直接買取に持ち込むのが合理的な選択になります。
- Q.仲介会社に「両手取引ですか?」と聞いてもよいですか?
- A.確認すること自体は問題ありません。媒介契約を結ぶ前に、両手取引になるか、買主側からも仲介手数料を受け取る予定があるかを確認することで、自分の取り分の見通しが立てやすくなります。明確な回答を避ける仲介会社は、慎重に検討する材料の一つになります。
- Q.良心的な仲介エージェントは存在しないのですか?
- A.売主の手出し額が大きすぎる場合に、買主側の仲介手数料を規定上限より少なめに抑える、極端な場合には買主側の仲介手数料をとらず、買取業者の査定額をそのまま売主に提示するエージェントは存在します。ただし仲介会社の売上を減らす行為になるため、会社方針として許される範囲は限られています。大手仲介の両手取引比率の高さからも、こうした柔軟な対応が業界で広く行われていないことが見て取れます。
7. まとめ
投資用ワンルーム売却で使われる業界用語「○○万円込み」とその背景を整理しました。
- 「○○万円込み」は買取業者が仲介会社に査定を回答する時に使う業界スラング
- 「買主側の仲介手数料込み」の意味
- 両手取引は合法で、業界では一般的な取引形態
- 売主には差し引き後の額が「査定額」として届くため、本来の業者提示額は見えにくい
- 規定の上限を超えて抜くことが「できてしまう素地」はある(ただし大っぴらにはやられていない)
- 良心的な仲介エージェントは買主側の手数料を抑えて売主の取り分を増やす調整をすることがあるが、業界では少数派
- ワンルーム売却では、仲介を挟むほど取り分が削られやすい
- 直接買取に持ち込めば仲介手数料が発生せず、業者の提示額がそのまま手取りになる
「査定額」と書かれた金額が、業者の本来の提示額なのか、仲介手数料を引いた後の金額なのか、売主の立場ではわからないことが多くあります。複数の経路から査定を取って比較するのが、かしこい売却方法と言えるでしょう。
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