投資用ワンルーム買取一括査定

税金

投資用ワンルームの売却損は給与と損益通算できる?できない仕組みと例外を解説

著:投資用ワンルーム買取一括査定 編集部

投資用ワンルームを売って損が出たとき、「確定申告すれば給与から引かれた税金が戻ってくるのでは」と考える方は少なくありません。ネットで「不動産の売却損は損益通算できる」という情報を見れば、なおさらそう思えます。

結論を先にお伝えすると、投資用ワンルームの売却損(譲渡損失)は、給与所得などほかの所得とは損益通算できません。保有していた間は不動産所得の赤字を給与と通算して税金が戻っていたのに、売却で損したら戻らない——この一見ちぐはぐに見える扱いには、税制上の理由があります。

この記事では、なぜ給与と通算できないのかを申告分離課税という仕組みから解説し、損益通算が使える居住用財産の特例2種(買換え型・残債型)の中身、投資用でも唯一通算できる「同一年の内部通算」という例外、そして名前が紛らわしい特例をめぐるよくある誤解までを扱います。

なお、この記事は税務の一般的な解説です。実際の取り扱いは物件や状況によって変わるため、最終的な判断は税理士や所轄の税務署に確認することをおすすめします。

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1. そもそも損益通算とは

損益通算とは、ある所得で出た損失を、別の所得の利益から差し引いて、全体の課税対象を圧縮する仕組みです。たとえば事業で 100万円の赤字が出て、給与所得が 500万円ある場合、一定の範囲で 500万円から 100万円を引いて 400万円に対して課税してもらえる、というのが損益通算の基本的なイメージです。

この仕組みがあるおかげで、片方で損が出ても、もう片方の利益にかかる税金を減らせます。給与から源泉徴収された税金の一部が、確定申告を通じて還付される、という形です。

ところが、所得なら何でも自由に通算できるわけではありません。損益通算には「どの所得の損失を、どの所得から引けるか」というルールがあります。投資用ワンルームの売却損が給与と通算できるかどうかも、このルールの問題です。

2. なぜ給与と通算できないのか

投資用ワンルームの売却損が給与と通算できない理由は、土地や建物を売って得た譲渡所得が「申告分離課税」の対象だからです。聞き慣れない言葉なので、順番に説明します。

総合課税と申告分離課税

所得税の計算方法には、大きく分けて2つの方式があります。

課税方式内容主な所得
総合課税複数の所得を合算し、その合計に累進税率をかける給与所得、事業所得、不動産所得(家賃)など
申告分離課税ほかの所得と合算せず、その所得だけを切り離して税額を計算する土地・建物の譲渡所得、株式の譲渡所得など

給与所得や、家賃から経費を引いた不動産所得は「総合課税」のグループに入ります。これらは合算して、合計額に税率をかけます。一方、土地・建物を売ったときの譲渡所得は「申告分離課税」になります。給与などとは別の箱で、その譲渡だけを取り出して税額を計算する、ということです。

別の箱どうしは原則として通算できない

給与所得(総合課税の箱)と、不動産の譲渡所得(申告分離課税の箱)は、そもそも計算の土俵が別になっています。土俵が別なので、申告分離課税の箱で出た譲渡損失を、総合課税の箱にある給与所得から引く、ということが原則としてできません。

「損は損なのだから、どこかから引けてもよさそう」と感じるかもしれませんが、税制上は所得の種類ごとに通算できる相手が決められています。土地建物の譲渡損失について、国税庁は「その控除をしてもなお控除しきれない損失の金額は、事業所得や給与所得など他の所得と損益通算することはできません」と明示しています。これが、投資用ワンルームの売却損が給与から税金を取り戻せない理由です。

出典:国税庁 タックスアンサー No.3202(譲渡所得の計算のしかた・分離課税)/ No.3203(不動産を譲渡して譲渡損失が生じた場合)

3. 保有中の赤字とは別物:混同しやすいポイント

ここで多くの方がつまずくのが、「保有中は給与と通算できて税金が戻っていたのに」という記憶との食い違いです。

投資用ワンルームを持っている間は、家賃収入から経費(減価償却費・管理費・ローン利息など)を引いた不動産所得が会計上の赤字になることがあります。この不動産所得は総合課税のグループなので、給与所得と損益通算でき、源泉徴収された税金の一部が還付されます。業者の「節税できますよ」というトークの根拠も、この保有中の通算です。

つまり、投資用ワンルームには性格の違う2つの場面が登場します。

場面所得の種類課税方式給与との損益通算
保有中(賃貸中)の赤字不動産所得総合課税できる
売却したときの損失譲渡所得申告分離課税できない

同じ「ワンルームで出た損」でも、保有中の不動産所得の赤字は総合課税なので給与と通算できるのに対し、売却時の譲渡損失は申告分離課税なので給与と通算できません。課税方式が違うため、扱いが異なるわけです。

なお、保有中の還付の多くは減価償却によって生じており、その減価償却は売却時に建物の取得費を目減りさせて譲渡益を増やす方向に働きます。保有中に戻った税金が売却時に出ていく「繰り延べ」に近い性質については、減価償却の解説で詳しく扱っています。譲渡所得税の全体像は譲渡所得税ガイドで扱っています。

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4. 例外的に通算できる場面:同一年の内部通算

「投資用はどこからも通算できない」かというと、ひとつだけ通算できる場面があります。それが同じ年に売ったほかの土地・建物の譲渡益との通算です。

申告分離課税の譲渡損失は、給与(総合課税)とは通算できませんが、同じ申告分離課税の箱の中、つまり同一年に売却したほかの土地・建物の譲渡所得(譲渡益)からは差し引けます。これを内部通算と呼びます。土俵が同じものどうしなら相殺できる、という理屈です。

具体例で見てみます。

  • 同じ年に、A物件(投資用ワンルーム)と B物件(別の不動産)を売却した
  • A物件は 200万円の譲渡損失
  • B物件は 300万円の譲渡益
  • このとき、B物件の譲渡益 300万円から A物件の損失 200万円を差し引ける
  • → その年の課税対象の譲渡所得は 100万円になる

複数の物件を保有していて、同じ年に益の出る物件と損の出る物件を売る場合は、この内部通算で全体の税負担を抑えられる可能性があります。注意したいのは、これはあくまで土地・建物の譲渡所得どうしの相殺であって、給与所得との通算ではない、という点です。B物件の譲渡益がなければ、A物件の損失は使い道がなく、給与から税金を取り戻すこともできません。

複数物件を保有していて売却の順序やタイミングを検討している場合は、同じ年にまとめて売るかどうかで税負担が変わることがあるため、税理士に相談する価値があります。

出典:国税庁 No.3203(不動産を譲渡して譲渡損失が生じた場合)

5. 損益通算が使えるのは居住用財産の特例だけ

「不動産の売却損は損益通算できる」「申告すれば税金が戻る」という情報は、誤りではありません。ただしそれはマイホーム(居住用財産)を売ったケースの話で、投資用ワンルームには当てはまりません。

居住用財産の譲渡損失については、一定の要件を満たす場合に限り、給与など他の所得との損益通算が認められ、引ききれなかった損失は譲渡した年の翌年以後3年間にわたって繰り越せます。投資用・賃貸用の不動産は、はじめからこの特例の対象外とされています。

この居住用財産の特例には、性格の異なる2種類があります。名前と要件が紛らわしく、自分の投資用ワンルームに当てはまるのではと誤解されやすいので、それぞれの中身を整理しておきます。

出典:国税庁 No.3203(居住用財産の譲渡損失は一定要件で損益通算・3年繰越が可能)

特例①:買換え型(No.3370)

ひとつめは、マイホームを売って、新しいマイホームに買い換えた場合の特例です。

  • 対象:現に自分が住んでいる(または住まなくなって一定期間内の)マイホーム
  • 中心となる要件:新しいマイホームを取得し、そこに住むこと(買換え)が前提
  • 効果:旧マイホームの売却で出た譲渡損失を、給与などと損益通算でき、引ききれない分は翌年以後3年間繰り越せる

ポイントは「買い換えること」が条件になっている点です。売っただけでは使えず、新居の取得と居住がセットで求められます。当然ながら、自分が住むためのマイホームを買い換える話なので、賃貸に出している投資用ワンルームは対象になりません。

出典:国税庁 No.3370(マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき)

特例②:残債型(No.3390)

ふたつめは、住宅ローンが残っているマイホームを売って、売却額が住宅ローン残高を下回った場合の特例です。

  • 対象:現に自分が住んでいる(または住まなくなって一定期間内の)マイホーム
  • 中心となる要件:買い換えは不要。ただし、売買契約日の前日時点で返済期間10年以上の住宅ローンが残っていて、売却額がローン残高を下回っていること。所有期間も譲渡年の1月1日時点で5年超であることが必要
  • 効果:ローン残高から売却額を引いた範囲などを限度に、譲渡損失を給与などと損益通算でき、引ききれない分は翌年以後3年間繰り越せる

こちらは買い換えが不要な代わりに、「ローンが残っていて、売っても返しきれない」という残債超過の状況が条件になっています。

6. よくある誤解:オーバーローンのワンルームでも残債型は使えるのか

第 5 章の特例②(No.3390)は、ここで注意が必要です。「住宅ローンが残っているマイホームを売って、売却額がローン残高を下回った場合」という条件が、オーバーローン状態のワンルームを手出し売却する状況に字面がそっくりだからです。

投資用ワンルームでは、ローン残債が査定額を上回るオーバーローン状態が起こりやすく、差額を自己資金で埋めて売る手出し売却になりがちです。「売却額がローン残高を下回っている」という点は、まさにこの状況に重なります。そのため「自分のワンルームもオーバーローンだから、残債型の特例で税金が戻るのでは」と考えてしまう方がいます。

ですが、No.3390 の特例はあくまで居住用財産(マイホーム)に限定されています。対象は自分が住んでいる、または住んでいた家屋です。投資用ワンルームは賃貸に出していた物件なので、ローンの残り方や売却額との関係がどれだけ似ていても、用途の要件で対象から外れます。ローン残高が売却額を上回っているかどうかではなく、その物件が居住用か投資用かで判定される、ということです。

この線引きは用途で決まるので、賃貸中(オーナーチェンジ)で売ったか、空室にして売ったかは関係ありません。投資用として保有していた物件であれば、いずれの特例も使えません。残債が大きい物件の売却の進め方そのものはローン残債が多いワンルームの売却で扱っています。

出典:国税庁 No.3390(住宅ローンが残っているマイホームを売却して譲渡損失が生じたとき)

7. 売却損なら確定申告は原則不要

ここまでの整理から、投資用ワンルームの売却損についての申告の要否も見えてきます。

譲渡所得がマイナス(売却損)なら、譲渡所得税はそもそもゼロです。投資用ワンルームは損益通算や繰越控除の特例が使えないため、損失を申告しても税金が戻ることはなく、申告するメリットもありません。売却損なら、譲渡についての確定申告は原則として不要、ということになります。

「損失を税務署に認識させるために申告しておく必要がある」という説明を見かけることがありますが、これは居住用財産の特例を使う場合の話で、投資用ワンルームには当てはまりません。

ただし、ひとつ別の注意点があります。売却した年に賃貸していた期間の家賃収入については、譲渡とは別に不動産所得の確定申告が必要なことがあります。これは売却(譲渡)の話ではなく、その年に賃貸経営をしていた分の所得についての申告です。譲渡の申告が不要でも、家賃分の申告まで不要になるわけではない点に注意してください。

申告書や譲渡所得の計算明細書の書き方、必要書類といった申告の実務は確定申告の解説で扱っています。

出典:国税庁 No.3203(譲渡損失が生じた場合)/ No.1376(不動産所得の課税のしくみ)

8. よくある質問

Q.投資用ワンルームの売却損は、給与所得と損益通算できますか?
A.できません。土地・建物を売ったときの譲渡所得は申告分離課税の対象で、給与所得(総合課税)とは計算の土俵が別になっています。そのため、譲渡損失を給与所得から差し引いて税金を取り戻すことは原則としてできません。給与と通算できるのは保有中の不動産所得の赤字(総合課税)で、売却時の譲渡損失とは別物です。
Q.保有中は給与と通算して税金が戻っていたのに、なぜ売却損は戻らないのですか?
A.課税方式が違うためです。保有中の家賃から生じる不動産所得は総合課税のグループで、給与と合算して通算できます。一方、売却で出る譲渡所得は申告分離課税で、給与とは別枠で計算されるため通算できません。同じワンルームの損でも、保有中(総合課税)と売却時(分離課税)で扱いが異なる、と分けて理解してください。
Q.投資用でも損益通算できるケースはありますか?
A.同じ年にほかの土地・建物を売って譲渡益が出ている場合は、その譲渡益から投資用ワンルームの譲渡損失を差し引けます。これを内部通算といい、申告分離課税の箱の中での相殺なので可能です。ただし、これは土地・建物の譲渡所得どうしの相殺であって、給与所得との通算ではありません。同じ年に売る譲渡益がなければ、損失の使い道はありません。
Q.住宅ローンが残ったまま売って損が出ました。残債が売却額を上回る特例で税金は戻りますか?
A.その特例(No.3390)は、住宅ローンが残っているマイホーム(居住用財産)を売った場合に限られます。オーバーローンのワンルームは状況が字面では似ていますが、投資用・賃貸用は対象外です。ローン残高が売却額を上回っているかどうかではなく、その物件が居住用か投資用かで判定されるため、投資用ワンルームには使えません。
Q.「不動産の売却損は損益通算できる」という情報は間違いですか?
A.間違いではありませんが、マイホーム(居住用財産)を売ったケースの話です。居住用財産の譲渡損失は、買換え型(No.3370)や残債型(No.3390)の特例で、一定要件を満たせば給与などと損益通算でき、引ききれない分を翌年以後3年間繰り越せます。これらの特例は居住用に限定されていて、投資用ワンルームは対象外です。
Q.売却損が出たら確定申告は必要ですか?
A.譲渡について言えば、売却損なら譲渡所得税はゼロなので、原則として確定申告は不要です。投資用ワンルームは損益通算や繰越控除の特例も使えないため、申告するメリットもありません。ただし、売却した年に賃貸していた期間の家賃収入については、譲渡とは別に不動産所得の申告が必要になることがあります。

9. まとめ

投資用ワンルームの売却損と損益通算について、整理します。

  • 投資用ワンルームの売却損(譲渡損失)は、給与所得などほかの所得とは損益通算できない
  • 理由は、土地・建物の譲渡所得が申告分離課税で、総合課税の給与所得とは計算の土俵が別だから
  • 保有中の不動産所得の赤字(総合課税)は給与と通算できる。保有中と売却時で扱いが異なるのは課税方式の違いによる
  • 例外は同一年に売ったほかの土地・建物の譲渡益との内部通算。給与との通算ではない
  • 損益通算・繰越控除が使えるのは居住用財産の特例(買換え型 No.3370/残債型 No.3390)に限られ、投資用ワンルームは用途で対象外
  • 名前が似ている残債型の特例も居住用限定で、オーバーローンのワンルームには使えない
  • 売却損なら譲渡についての確定申告は原則不要。ただし売却年の家賃分の不動産所得の申告は別途必要なことがある

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