投資用ワンルーム買取一括査定

税金

投資用ワンルームの減価償却は「節税」ではなく税金の繰り延べ

著:投資用ワンルーム買取一括査定 編集部

「ワンルームを買えば減価償却で節税できる」――購入を勧められたとき、こんな説明を受けた方は少なくありません。実際に確定申告をすると税金が戻ってくるので、「たしかに節税になっている」と感じている方も多いはずです。

この記事では、投資用ワンルームの減価償却が実際のところ何をしているのかを解説します。先に結論をお伝えすると、減価償却による税の軽減は「払わなくてよくなった」のではなく、「払う時期を後ろにずらした」という性格が強いものです。保有中に減った税の多くは、売却するときに譲渡所得税として戻ってくる――この「繰り延べ」の構図を、一般化した試算とあわせて見ていきます。

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1. 減価償却とは何か(建物は対象、土地は対象外)

減価償却とは、減価償却資産の取得に要した金額を、一定の方法によって各年分の必要経費として配分していく手続きです(国税庁 タックスアンサー No.2100)。

かみ砕くと、物件の値段を「買った年に一括で経費にする」のではなく、その建物が使えると見込まれる年数(耐用年数)にわたって、少しずつ経費に振り分けていく仕組みです。建物は時間の経過とともに価値が減っていく資産なので、減っていく分を毎年の経費として落としていく、という考え方になります。

ここで押さえておきたいのが、減価償却できるのは建物部分だけという点です。

  • 建物・建物附属設備 → 時間とともに価値が減る → 減価償却の対象
  • 土地 → 時間が経っても価値が減らない(とされる)→ 減価償却の対象外

物件の購入価格は「土地の値段」と「建物の値段」に分かれており、経費として落とせるのは建物部分だけです。そのため、同じ購入価格でも、価格に占める建物の割合が大きいほど減価償却費も大きくなります。

償却方法と耐用年数(目安)

2007年(平成19年)4月1日以降に取得した建物は、定額法(毎年同じ額を経費に計上する方法)で計算します。多くの投資用ワンルームはこの時期以降の取得なので、毎年ほぼ一定額が経費になると考えておけば、ざっくりした感覚はつかめます。

耐用年数については、注意が必要です。

  • RC造(鉄筋コンクリート造)の住宅用建物の法定耐用年数は47年――ただしこれは新築で取得した場合の目安です
  • 中古で買った場合は、これより短い耐用年数になります(築年数が経過しているぶん、残りの使用可能年数が短くなるため)

中古物件の耐用年数には「簡便法」という計算方法があり、たとえば法定耐用年数の一部が経過している中古であれば47年より短い年数で計算します。耐用年数が短いほど、1年あたりの減価償却費は大きくなります。ここでは「新築なら47年が目安、中古はそれより短い」と押さえておきましょう。

2. 保有中の効果:不動産所得の赤字を給与と相殺できる

減価償却が「節税になっている」と感じられるのは、保有中の確定申告で実際に税金が戻ってくるからです。その仕組みを整理します。

投資用ワンルームを持つと、税法上は「不動産貸付(不動産所得)を営んでいる」状態になります。家賃収入から、ローンの利子・管理費・修繕積立金・固定資産税、そして減価償却費などの経費を差し引いて、不動産所得を計算します。

このとき、減価償却費は実際に現金が出ていく経費ではないのに金額が大きいため、不動産所得が会計上の赤字になることがよくあります。そして、不動産所得の赤字は給与所得など他の黒字の所得から差し引くことができます。これを損益通算といいます(国税庁 タックスアンサー No.1391No.2250)。

給与所得と相殺すると課税対象の所得が下がるので、すでに源泉徴収(天引き)されていた所得税の一部が、確定申告によって還付されます。これが「ワンルームで税金が戻ってきた」と感じる正体です。

ここまでは、制度どおりに実際に起きていることです。保有中に還付を受けられること自体は事実で、業者の説明がまるごと嘘というわけではありません。問題は、この還付が「後で取り戻される繰り延べ」、という点にあります。

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3. 売却時に何が起きるか:取得費が目減りして譲渡益が増える

ここが本記事の中心です。保有中に減価償却で経費を落とした分は、売却するときに姿を変えて現れます。

不動産を売ったときの税金(譲渡所得税)は、おおまかに次の式で決まります(国税庁 タックスアンサー No.3152)。

譲渡所得 = 譲渡価額 −(取得費 + 譲渡費用)

  • 譲渡価額 … 売った金額
  • 取得費 … 買ったときの金額など
  • 譲渡費用 … 売却にかかった費用

ポイントは「取得費」の中身です。建物の取得費は、買ったときの金額そのままではなく、保有期間中の減価償却費の累計を差し引いた額を使います(国税庁 No.3261)。

建物の取得費 = 建物の購入代金など − 保有期間中の減価償却費の累計

つまり、保有中に減価償却で経費に落としてきた金額のぶんだけ、売却時の取得費は小さくなります。取得費が小さくなれば、上の式の引く側が小さくなるので、譲渡所得(売却の利益)は大きく計算されることになります。

なお、減価償却費は「実際に確定申告で経費に計上したかどうか」に関わらず、計算上の累計を取得費から差し引く扱いになっています(国税庁 タックスアンサー No.3261)。「申告で落としていなかったから取得費は減らないはず」とはならない点に注意してください。

4. 繰り延べの本質:減らした税を売却時に取り戻される

ここまでをつなげると、減価償却の全体像が見えてきます。

  1. 保有中:減価償却費で不動産所得を赤字にし、給与と損益通算して税の還付を受ける
  2. 売却時:減価償却で落とした累計が取得費を小さくし、その分だけ譲渡所得(利益)が増えて、譲渡所得税が大きくなる

保有中に軽くなった税は、消えてなくなったわけではありません。売却するときに「取得費が小さくなる」という形で、譲渡所得税として現れます。これが、減価償却が「節税」というより「税金の繰り延べ」(払う時期の後ろ倒し)と言われる理由です。

一般化した数字で、流れだけを見てみます(あくまで一例で、実際の金額は物件・耐用年数・税率で変わります)。

タイミング起きること税への影響(一例)
保有中(5年間)減価償却で不動産所得が赤字 → 給与と損益通算 → 還付5年で合計およそ 数十万円の還付
売却時取得費が減価償却累計のぶん目減り → 譲渡所得が増える増えた譲渡益に対して譲渡所得税がかかる
差し引き保有中に減らした税の多くが売却時に戻ってくる純粋に得した分は当初の印象より小さくなりやすい

たとえば建物価額が1,000万円、新築RC造(耐用年数47年・定額法)のケースだと、1年あたりの減価償却費はおよそ「1,000万円 × 0.022 ≒ 22万円」、5年でおよそ110万円が経費の累計になります。この110万円は保有中の不動産所得を圧縮して還付に寄与しますが、同じ110万円が売却時には取得費を110万円分小さくし、その分だけ譲渡所得を押し上げます。

このため、減価償却を「大きな節税」と捉えるのは実態と乖離があります。保有中の還付額をそのまま「得した金額」と数えてしまうと、売却時に戻ってくる分を見落とすことになります。

税率差で一部が「純粋な節税」として残ることはある

保有中に軽くなった税率と、売却時にかかる税率が違うと、その差額が手元に残る場合はあります。長期譲渡(譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超える場合)の税率は20.315%です(国税庁 No.3208)。仮に保有中の所得税・住民税の負担率がこれより高い方であれば、高い税率で戻し、低い税率で払うことになり、差が残りうる、という理屈です。

ただし、これにはいくつもの前提が付きます。

  • 長期譲渡になるのは所有期間が5年を超える場合で、5年以下の短期譲渡の税率はおよそ39.63%と高くなります
  • 投資用ワンルームはそもそも売却損になることも多く、その場合は譲渡所得税自体がかからない(繰り延べる対象もない)こともあります
  • 税率差で残る分があったとしても、物件価格に乗っている業者の利益のほうが大きいことが多く、トータルで見れば減価償却の節税効果だけで投資の損得は決まりません

税率や長期・短期の判定の詳細は譲渡所得税そのものの話になるため、本記事では「繰り延べが基本、税率差で一部が純粋な節税になりうるが、それ自体は大きくない」とだけ押さえておきます。

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5. 混同しやすい論点:「保有中の赤字」と「売却時の損」は別物

税金の話で最も誤解されやすいのが、損益通算の2つの場面です。同じ「損益通算」という言葉でも、保有中の話と売却時の話は性格が大きく異なります。ここを混同すると判断を誤るので、対比して整理します。

場面何の損か給与所得との損益通算根拠
保有中不動産所得の赤字(減価償却費などで赤字化)できる(還付につながる)国税庁 No.1391 / No.2250
売却時譲渡損失(売却して出た損)できない(投資用は対象外)国税庁 No.3203
  • 保有中の不動産所得の赤字は、給与所得と損益通算できます。これが本記事の前半で説明した、還付の仕組みです。
  • 一方、売却して出た譲渡損失は、投資用ワンルームの場合、給与所得と損益通算できません。損益通算や繰越控除の特例はマイホーム(居住用財産)に限られており、投資用は対象外だからです(国税庁 No.3203)。

「保有中は赤字を給与と相殺できたのだから、売って損が出ても同じように相殺できるはず」と考えてしまいがちですが、この2つは別の制度です。売却損が出ても給与所得から差し引いて税を取り戻す、という形にはなりません(投資用ワンルームの売却損と税金の関係は「手出し売却の完全ガイド」でも触れています)。

6. 見落とされがちな点:土地取得のための借入利子は損益通算できない

もう一つ、業者の「赤字を全部給与と相殺できる」という説明とずれてくる点があります。これは一般的な減価償却の解説ではあまり触れられない部分です。

不動産所得の赤字を給与と損益通算するとき、その赤字のうち「土地等を取得するために要した借入金の利子に相当する部分」は、損益通算の対象から外れます(国税庁 No.1391)。

投資用ワンルームは、フルローンに近い形で購入されることが多く、ローンの利子は不動産所得の経費のなかでも大きな割合を占めます。そして物件の購入価格には土地の取得分も含まれているため、ローンの利子にも「建物を買うための利子」と「土地を買うための利子」が混ざっています。このうち土地分の利子に当たる部分は、赤字に含まれていても給与所得との損益通算には使えない、という扱いになっています。

つまり、「赤字だからその分まるごと給与と相殺して還付を受けられる」というイメージより、実際に損益通算できる赤字は、土地利子分だけ目減りすることになります。

  • 業者の説明上のイメージ:不動産所得の赤字 → そのまま全額を給与と相殺
  • 制度上の実際:赤字のうち、土地取得のための借入利子に相当する分は損益通算の対象外

この差は、フルローンで土地の割合が大きい物件ほど影響してきます。ワンルームでは建物より土地の価値の方が高い場合が多いため、借入利子に相当する部分も大きくなりがちです。

7. まとめ:減価償却は「節税」というより「繰り延べ」

ここまでをまとめます。

  • 減価償却は、建物の取得費を耐用年数にわたって少しずつ経費に振り分ける仕組み。土地は対象外
  • 保有中は、減価償却費などで不動産所得を赤字にし、給与所得と損益通算して税の還付を受けられる(これは実際に起きる)
  • ただし売却時には、減価償却で落とした累計のぶん取得費が小さくなり、譲渡所得(利益)が増えて譲渡所得税が大きくなる
  • つまり保有中に軽くなった税の多くは、売却時に取り戻される。「節税」というより「税金の繰り延べ」という性格が強い
  • 損益通算は、保有中の不動産所得の赤字(できる)と、売却時の譲渡損失(投資用はできない)で別の制度
  • 不動産所得の赤字のうち、土地取得のための借入利子に当たる分は損益通算の対象外

減価償却の還付は、保有期間中の「税金の前借りの戻し」に近い性格があり、それ自体で投資の損得が決まるわけではありません。物件を持ち続けるか、売却して整理するかを考えるときは、保有中の還付額だけでなく、売却したときに譲渡所得税がどう動くか、そして物件の現在の査定額と残債のバランスまで含めて見ることが、判断材料を整える出発点になります。

その出発点になるのが、現在の正確な査定額です。買取業者から複数の査定を取り、残債と比較してみることで、保有を続けた場合とのコストの違いが見えてきます。

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8. よくある質問

Q.減価償却は節税になりますか?
A.保有中の確定申告では、減価償却費などで不動産所得を赤字にして給与所得と損益通算でき、税金の還付を受けられます。その意味では保有中の税負担は軽くなります。ただし減価償却で経費に落とした分は、売却時に取得費が小さくなる形で譲渡所得を押し上げ、譲渡所得税として現れます。保有中に軽くなった税の多くは売却時に取り戻されるため、純粋な節税というより「税金の繰り延べ(払う時期の後ろ倒し)」という性格が強いと考えておくのが実態に近いです。
Q.なぜ売却すると税金が増えるのですか?
A.譲渡所得は「譲渡価額 −(取得費 + 譲渡費用)」で計算します。建物の取得費は、買ったときの金額から保有期間中の減価償却費の累計を差し引いた額を使うため、減価償却を多く計上しているほど取得費が小さくなります。取得費が小さくなると譲渡所得(利益)が大きく計算され、その分だけ譲渡所得税も大きくなります。なお減価償却費は、実際に申告で経費計上したかどうかに関わらず計算上の累計を取得費から差し引く扱いです(国税庁 No.3261)。
Q.土地は減価償却できますか?
A.できません。減価償却の対象は、時間の経過とともに価値が減るとされる建物・建物附属設備などです。土地は時間が経っても価値が減らないとされるため、減価償却の対象外です(国税庁 No.2100)。物件の購入価格のうち、経費に落とせるのは建物部分だけになります。
Q.保有中の赤字が給与と相殺できるなら、売却損も相殺できますか?
A.別の制度なので、同じようには扱えません。保有中の不動産所得の赤字は給与所得と損益通算できますが、売却して出た譲渡損失は、投資用ワンルームの場合は給与所得と損益通算できません。損益通算や繰越控除の特例はマイホーム(居住用財産)に限られ、投資用は対象外だからです(国税庁 No.3203)。
Q.中古ワンルームの耐用年数はRC造の47年ですか?
A.47年は新築で取得した場合のRC造住宅用の法定耐用年数の目安です。中古で取得した場合は、築年数が経過しているぶん、これより短い耐用年数(簡便法による計算など)になります。耐用年数が短いほど1年あたりの減価償却費は大きくなります。中古の具体的な計算(簡便法など)は確定申告の実務にあたるため、ここでは省きます。

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